転落

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「メリー・クリスマス!」 十二月の日曜日、駅前商店街にはサンタクロースが溢れていた。店主から店員、ティッシュ配りのアルバイトまで、老若男女が赤い衣装に身を包んでいる。 「まいど、ありがとうございます」 佐久間美智は、老舗の和菓子店で饅頭を買った。礼を言う店員も、白いボンボンのついた赤い帽子をかぶり赤いミニスカートをはいている。子供の頃には憧れた衣装だが、それはプレゼントをもらう立場だからで、自分で身に着けてみたいとは思わなかった。似合わないと分かるからだ。それは今も変わっていない。そんなことを考えながら通りに出た。その時だ。 「責任とりなさいよ!」 ヒステリックな女の声が木霊する。それはクリスマスムードを盛り上げるBGMとは、あまりにも不釣り合いな声だった。 「物件、まるまる買い取れよ!」 今度は男の怒鳴り声がする。声の出所はモチズリ不動産の店舗で、自動ドアが閉まらないほどの人が溢れていた。ヒステリックな声は、高齢者向けシェアハウスを建てたオーナーたちがクレーマーに変わったものだった。
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