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市内で一番の高級ホテルといわれる桃水閣は駅の西口にある。車を駅前の駐車場に停め、歩いてホテルに向かった。
「メリー・クリスマス、これ、どうぞ!」
まもなく午後八時になるというのにサンタクロースの格好をしたアルバイトがティッシュを配っていた。紙袋の中には、まだ沢山のティッシュが残っている。それを配り終えるまで帰ることができないのだろう。
「ありがとう」
手に取って見るとキャバクラの宣伝だった。「私にどうしろというの?」ぼやきながらホテルの自動扉をくぐった。
出入り口近くにあるイベント案内表示板に目を走らせる。そこには十を超える宴会場があって、会場ごとに開かれているイベントの案内がされていた。ほとんどは企業の忘年会で、県経済連合会のクリスマスパーティーの案内はなかった。
「なるほど……」
三階の大ホールだけが空欄なのだ。案内表示のないそこに見当をつけてエレベータに乗った。
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