それは甘からず

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それは甘からず

 バレンタインの日、先輩から大事な話があると言われた。一体何だろう。どきどきしながら先輩の言葉を待つ。  先輩とふたりきりの部室で、石油ストーブが立てる音が、妙に大きく聞こえた。  こんな日に大事な話だなんて、それはもうひとつしか思い当たる節はない。鞄を開けて手を入れている先輩を見て期待が高まる。  そして、先輩が鞄から出したのは細長い物。  チョコかと思ったら、それは全く違う物だった。 「はい、部室の鍵。来年はよろしくね」  そうだ、先輩はもう来年はいないんだ。  この部室を俺に託す先輩の気持ちは、どんな物なのだろう。そう思っていると、先輩がまた鞄から何かを出した。 「チョコもあるから、一緒に食べよう!」  つい顔が緩んだ。
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