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小鳥にこんにちはの挨拶をしながら、上空を旋回。
チョコレートおばけは、冬の昼間を吹く風になる。
死んでしまったというのに、少し曇った空の灰色すら愛おしくて。
ぐんぐんと飛びゆくスピードを上げる僕は、ただただ楽しくはしゃいでいた。
「なんて気持ちいいんだろう。」
トロトロになった下半身は、削れていくけれど、痛くも痒くもない。
こんなに気持ちいいなら、こんなに怖くないなら、死ぬってそんなに悪くない。
小鳥も見えなくなった空で一人、ほくそ笑む僕は、地上にパパとママを見つけた。
僕がまだ身体の中でぶくぶくしてた時の、ママを轢いた車の人が、二人の前で頭を地面に着けて、大声で泣いて謝っている。
ごめんなさいを、たくさんのお金の束とチョコレートを添えて渡してる。
「僕の命は、あのお金に変わったんだ。」
嫌ではないけど、不思議な気持ちだった。
あのお金と僕の命がイコールで結ばれるものなら。
お金の束を使った、これからのパパとママの生活の何処かに、もう生きていない僕は、何も遺さなかった僕はいるのだろうか。
「うーん、難しいなあ。」
こういうのを『哲学』と言うのかな。
パパとママは悲しそうな顔をして、車の人とは反対に、静かに泣いていた。
僕のことを大事に思うから、泣いていた。
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