第二章

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 玄関での立ち話もなんですからと、澄子は男にダイニングの椅子を勧め、裕二のコップに水を注いで差し出した。男は水を一気に飲み干して、やっと安堵した表情になった。その間に、澄子は脱衣所へと急ぎ、下着姿といってもよい薄布から伸びた艶かしい肢体をスエットの上下に隠蔽して照明を消した。   「あの、裕二は?」 「出て行ったっきり帰らないんです。あたしが酷く(なじ)ったから――」        裕二は無職だった。澄子と出会った当初は名の通った企業に勤めるサラリーマンで羽振りも良かったのだが、何が気に食わなかったのか会社を辞職してからは職業を転々とするようになっていた。今では澄子の部屋に転がり込み彼女の飲食店でのバイト代を当てにするヒモのような生活をおくっていた。   「そうなんですね。それは困ったな。大事な話があったのに、でないと私は大変な事になる……」
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