第三章

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「詐欺紛い? 彼がですか?」 「そうです。私は高校を卒業してから職人として修行を積んで、将来は小さいながらも店を持ちたいと思っていたんです。しかし当時、付き合っていた彼女が職人なんてコツコツやっていても何時までも、うだつが上がらないからと言うので、彼女がバイトしていた飲み屋の常連客から紹介して貰った絵画セールスの仕事に転職したんです」 「貴方はそれで転職したんですね」  裕二と同じか、彼も最初はそこそこ名の知られた会社の社員だった。会社を飛び出し転職するたびに(すさ)んでいった。 「そうです。絵の価値なんて分かりもしないのにね。女って奴は世の中に夢を見過ぎてるんですよ。裕二も言ってましたよ。自分に合う仕事を探そうとしても、条件が良い仕事ほどブラックか犯罪すれすれなんだってね」
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