第四章

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 澄子と目を見合わせた田中の顔はフルフルと小刻みに左右に振れている。澄子は田中の手にあるスマフォに手を伸ばし、寄こせと意思表示した。一人暮らしの澄子にはこんな時の為の備えがあるからだ。 「そんな人知りません! 貴方達こそ警察呼ばれたらヤバイんじゃないの?」  そう叫び、インターフォンに向けて手にしたスマフォのスピーカーを向けると、スマフォからコール音が鳴り、女性の声が続いた。 「もしもし、こちら警視庁です! どうされましたか?」  途端に、男はマンションの廊下を駆け、逃げ去って行く。彼らはマンションに無許可で立ち入っている。彼らにとってマンションへの侵入など造作も無い事だ。しかし微罪でも警察に逮捕されるのは不味い。澄子の機転に田中は救われ、二人は玄関先でへたり込んだ。そこで田中は、玄関先に脱ぎ捨てられた仕立ての良い革靴が目に入った。
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