第五章

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「防犯用アプリよ。さぁ、本物の警察を呼ばれる前に、貴方も早く出て行って!」  怪訝な視線を察知し、強い言葉を発した澄子を田中は見詰める。美しく整った顔、眼は凛と力強いが、唇の瑞々しさが対比するように艶かしい。間近に息づく肢体を田中は足裏から頭の先まで舐めるように観察した。    田中の異様な視線に危険を感じとった澄子は、へたり込んだまま、めくれ上がった上着の裾を整え、肌蹴た胸元を何気なさを装い直す。   「イタリア製の靴をさ、裕二は随分と気に入っていたよな。出て行く時、裕二はどんな靴を履いて出て行った?」
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