最終章

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 絶叫に近い澄子の制止も聞かず、田中は脱衣所へと向かう。その後ろ姿を追い、すがりつく澄子もまた裸のままだ。    乱雑に物が投げ出されている浴室の引き戸前に立った田中へ縋り付き邪魔をする澄子ごと乱暴に戸を開ける。すると、そこには彼の予想した通り、まだ解体途中の遺体が一部残されていた。田中は胃が強くせり上がるのを感じたが、空腹では出る物も出ず、胸がむかついただけに終わった。    かつて愛した男の残骸を前に、小刻みに震える澄子の振動が田中の背中にも伝わってくる。 「ここまで遣っておいて今更、怯える事はないでしょう? 大丈夫。安心して、私も手伝いますよ。これで二人は共犯だ。二人だけの深い秘密が出来て嬉しいですよ、もう私たちは一蓮托生だ、離れられないんだ。それより胃に何か入れたいな。何か食べるものは無いの?」
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