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田中もチョコレートケーキの下に敷かれたアルミ箔を摘み、かぶりつく。ケーキは少しアルミ臭ささを感じさせ、予想していた味とは随分と違い、少し残念ではあった。このお嬢様、料理下手らしい。
「ビターチョコなんだな」
咀嚼し、不味いケーキを胃に押し込んで、澄子の差し出したコーヒーで口の中をすすいだ。澄子は先ほどから田中をジッと観察している。
「裕二を今でも愛してるか?」
「何でそんな事聞くの? 嫉妬?」
「念の為知っておきたいと思ってさ、裕二を殺すほど憎んでいたのか、それとも殺したいほど愛していたのか」
「殺したいほど憎んでた。さっきまではね。酷い男に惚れたのかも知れないって。でも、貴方の話を聞いて、今はもしかすると彼、立ち直れたのかも知れないって思ってる」
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