ゆきん子

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 ちなみに、祖母は”鷹”、”おたか”と言う。あまり関係の無い情報のはずだが、その年の離れた姉が、かなりのおばあちゃん子だったらしい。  もっとも、優里は生存中の”鷹”を知らない。  それを言えば、優里は姉に関しての記憶がほとんど無い。彼女が物心ついたときには、由紀はこの山里を去り、東京の名門大学に学び、有名企業に入学、海外で結局、客死するまで、二度とここには戻ってこなかったからである。  もっとも、海外で客死したと優里と両親が知るのは、この物語の時代からするとまだまだ、ずっと未来の時制なのだが。  余談になるが、客死といっても、その国で失踪し、その後、法的に”死亡”認定されたということなのだが。  よって、優里は姉を知らない。  聞けば、瓜二つなのらしいが・・それをいえば、祖母の”たか”にもそっくりなのらしいが、そういうのは、祖母の皺深い遺影だけではわからない情報であった。  しかし、杉村家のある伊賀市では、なかなかの”魔女”として有名だったらしい。  というか、この杉原家で生まれた女は、その血によって代々不思議な能力を持つという定評が、その昔からあった。”魔女”の”占い”、これがかなりの精度で当たるというのは、どうも、事実のようだ。そのアドバイスのおかげで、杉村家は、財を成すことが出来たというのが、もっぱらの下馬評。町の人も、まあ、外れても問題のないたわいの無い相談事で、”たか”に占ってもらうことにしていたという。それも、しかし、今となっては、優里のあずかり知らぬ昔々の話だ。  それよりも、今は、この”ゆきん子”といういわれ方だ。からかわれて、の次元を超えている。完全な、いじめだ。  杉村家への嫉妬もあるのかもしれないが、それにしてもひどい。まあ、今の世間で言われるように、いじめでいやがらせをされたり、暴力を振るわれるといったことが無かったのは、幸いだったといわざるを得ない。もっとも、そんなことをすれば、杉村家の雇っている屈強な樵たちが黙っていないだろうが・・  戦後、たとい機械化が進んでも、やはり大きな丸太を扱う職業が、生半可な腕っ節、足腰では勤まらないのである。  それを思えば、優里も、幼いころは彼らに混じって大台ケ原の山の中を駆け回ったものだ。
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