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煙草はマルボロメンソールライト8ミリに限る。アイスクリームはチョコミント。眠気覚ましのガムも、味が染み出る限り、ずっと噛んでいたい。ハッカのきいたのど飴は、喉が痛くない時でも舐めていると心地いいーー。
「ってオイ、なんだこの飴。全然スッキリしねーんだけど」
「いつものは売り切れてたんだよ。買ってこなかったらこなかったで怒るんだからいいじゃん」
チッ……と舌打ちしかけて、やめる。一日に何回も年下から小言を聞かされたくない。
正一に頼んで買ってきてもらったのど飴は、甘ったるいだけで全然ハッカがきいていなかった。スッキリしたいのに、こんなに甘いんじゃ、舐める意味がない。
口の中の飴をガリッと奥歯で噛んで水で流しこんでから、浮島は煙草に火をつける。
まだエアコンのいらない季節だが、徐々に湿度が浮島のアパートに侵入していた。風呂上がりともなると、不快指数は汗のようには流れてくれず、体の中にたまる一方である。
吸いこむ時のスースーした感覚を鼻の奥で感じつつベッドに寄りかかってテレビを観ていると、正一がチョコミントのアイスと平たい木のスプーンを持って台所からやってきた。
「ん、サンキュー」
「もうすぐご飯できるから、少しだけだよ」
「へいへい」
まだ少ししか吸っていない煙草を灰皿の上でもみ消し、アイスの蓋を開ける。ご飯前だろうが何だろうが、全部食べてやる。そう意気込んで食べていると、意外と早く正一はラーメンどんぶりをテーブルの上に二つ置いた。
昔からの顔見知りである正一と再会したのは、二年前の春。正一が、浮島の勤務先の大学に入学してきたのがきっかけだった。
正一が高校生だった頃の三年間は、いろいろあってほとんど顔を合わすことはなかった。久しぶりに会った時は、一瞬誰だかわからなかったものだ。
三年のブランクを経て再会したあと、正一は事あるごとに浮島の部屋へと遊びに来るようになった。
弟のような年の離れた友達のような……ここ最近における、浮島にとって唯一体の触れあい無しで同じ空間を共にできる男である。
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