たいした恋じゃない

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*** 「そうなんです~。意外とわからないもんですよね。自分が痴漢されてるかどうかなんて」  担々麺をズルズルとすすりながら、丸美は悟りきった声音で言った。  昼食時である。ガヤガヤと学生達のしゃべり声がいたるとこから聞こえてくる学生食堂で、浮島は同僚の丸美と昼食を食べていた。  甘いものと辛いものが大好きな丸美は、食堂でも激辛と噂の担々麺に、さらに追い一味をかけている。  デザートは出勤途中に買ってきたコンビニスイーツを食べるらしい。お盆の上には、『抹茶クリームトリプルチーズケーキプリン』という、なんともごちゃごちゃした名前のスイーツがあった。  出てくるのが早いというだけで、浮島も食堂ではいつも麺類を食べている。今日はわかめ蕎麦に一味をちょっとかけただけのものだ。 「最初はお尻とか胸に違和感を感じて『ん?』って思うんですけどね、もしこっちの勘違いだったらその人は冤罪になるわけじゃないですか。そう思うと可哀そうで言えないんですよね」 「いや、そこは言えよ」 「浮島さんだって言わないくせに」 「だるいかんな。それに、たまにイイ感じで触ってくるやつもいるし。ゾクゾクすんだよな、アレ」 「うわあ。相変わらず変態ですね~」 「うっせ。でも男と女は違うだろ」 「あたしより絶対痴漢されてる回数多いのに、それ言っちゃいます~?」  丸美はあざとくちゅるん、と麺をすすって笑った。だが、浮島にそのあざとさは全くもって効かない。 「でもさ、『ん?』って思った時点で大体やられてるもんじゃないの、そういうのって」 「そうなんですよねえ。でも言えないんですよ。怖いから言えないんじゃなくて、自分の勘違いだったら相手に悪いから、言えない」 「世話ないな」  丸美は「言えてる」とクスッと笑い、デザートに手を伸ばした。 「本当にされてるのに、気持ちいいから言わない浮島さんには言われたくないけど」  だいぶ脱線してしまったが、痴漢の話題になったのには訳がある。
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