たいした恋じゃない

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 耳元でぎゃあぎゃあと下品な話を繰り広げる四人組に、周辺に座る学生達の視線がチラチラと注がれる。  浮島達の近くのテーブルに座っていた女子学生達も、食べかけのお弁当を持って、離れたテーブル席に移動していった。  さすがの丸美も気まずそうに下を向いている。  内心かなりキていた浮島は、四人組をギロリと睨む。話に夢中な四人組は、もちろん隣から送られる視線に気づいてはいない。  そういう話は、正直してもいい。男だからわかる。浮島だって、チンコが小さかった男の話を知り合いのゲイバーのママによく愚痴る。  だが、場所は選ぶべきだ。  まだ食べていないデザートに手を伸ばそうとする丸美に「行こう」と言って、浮島は席を立つ。  お盆を返却口に返したあと、丸美が後ろについてきていないことに気がついた。急いでさっきのテーブルに戻ると、丸美はまだ椅子に座っていた。 「なに、さっきの彼氏?」 「え~違います~」 「カワイーねー。何年生? サークルは?」 「私、一応ここで働いてるんだけどぉ」 「うっそ。見えねえ。いくつなん?」 「ふつう女性に齢とか訊くー?」  丸美は隣の下品な四人組から、話しかけられているところだった。  男好きと公言しているだけあって、一瞬でも心配した自分がバカらしくなるほど、呑み屋のお姉ちゃんよろしく対応できている。  浮島は好みの男に媚びを売れても、どうでもいい相手や、一瞬でも嫌悪感を抱いた相手には無理だ。  男好きという共通点があるが、そこが丸美と違うところだ。そんなことを考えながら先に図書館へ戻っていようかと考えていると、四人組の一人が「じゃあ胸のサイズは?」と丸美に訊いた。 「え~? 言うわけないじゃん。あっ、もうこんな時間だ。じゃーね」  隣にいた一人が、立ち上がろうとした丸美の腕をガッと掴んで座らせた。『ガバマン』とTPOを完全無視して、平気で口にしていたヤツである。 「じゃあ連絡先教えてよ。ね?」
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