たいした恋じゃない

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 けれど、なんだかんだこちらの気持ちいいポイントを確実に突いてくるし、相性もまあまあ悪くなかった。何回かは、ラブホテルでセックスをした。  油断していたのは指使いがやたら良かったから。そう、浮島は指の動きが繊細な男が好きなのである。  どれくらい好きかというと、寿司屋のカウンターに座ると、寿司を握っている板前の手つきにうっとり見惚れてしまうレベルだ。魚の脂で光った指先で寿司なんか握ってる光景を見た日には、ムラムラがあふれて参ってしまう。  本当は板前のお相手をしてみたいけれど、なかなかゲイ専門の掲示板に彼らは登場してくれない。もしかすると、根っからのノンケ気質が集まる職種なのかもしれないな……なんて考えることもしょっちゅうだ。  高柳は板前ではないし、あまり人間としておもしろいとも思えなかった。だが、セックスは下手じゃないし、しつこく連絡を取ろうとしてくる気配もないので、楽な付き合いができると思った。  そろそろ品定め期間を脱して、ちゃんとしたセフレに昇格させっかなーと思った。そういうわけで昨夜、家に招いたのだ。  その結果が、今。  見事に腰がイッてしまったというわけである。  いざ事に及ぼうとした時のこと。高柳は急に発情期の動物よろしく鼻息を荒げ、浮島の後頭部をがっちりと固定し、顔をベッドに押しつけてきたのだ。  え? え? 何が始まんの? え、これレイプじゃね? なんて混乱しているうちに、まだほぐしていない尻に、浮島は後ろから男の性器をぶちこまれてしまった。  頭だけが冷静になりつつ、快楽に正直な自分の体を恨んだ。浮島はガツガツと容赦のない男からの攻撃に、シーツにしがみついて耐えに耐えて耐えたのである。  いくら射精できても、思いやりのないセックスの後味ほど最悪なものはない。  なんだこの男。こんなところだけ予想外でも、何にも面白くねえ。いてーし、きもちわりーし、いてーし、ゴムつけねーし、いてーし、中出しするし、いてーし。  優しすぎて眠くなるのはごめんだが、激しすぎて痛みが快楽を上回るのはもっとごめんだ。  浮島の不機嫌な態度にも気づかず、男はすべてが終わった後、一人ご満悦の表情で言った。 「僕、本当はSっぽいネコを組みし抱いてトロトロにするのが好きなんだ」  はあ、としか言いようがなかった。だから?
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