第一章

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 額を人差し指で“うりうり”と撫でて、撫でられたオウカが頭を小刻みに  揺らす。あの真っ黒な液体はオレにはまだ早い。一頻りオウカの頭を撫でた  母さんは、椅子に引っ掛けていたエプロンを手にしてはスーツの上から  羽織り、背中をオレに向けて来る。抱いていたオウカを下ろして母さんの  エプロン紐を閉めながら。 「オレも朝食手伝う?」 「大丈夫。それに今日の夜は明進人でしょ?」 「あれそだっけ? 日曜じゃないの?」 「もう、昨日は疲れた様子だったから母さんが変わったでしょう。」 「確かに! じゃあ今日の夜はオレかー。」 「ん。だから向こうでテレビでも見てなさい。」  そう言うと母さんは台所に入って行き朝食の準備を始めた。オレは母さんに  言われた通り、テレビ前のソファーへ胡座をかいて座る。その胡座の上を  目指してオウカ飛び込んで来てはそのまま寛ぐ。疲れててすっかり忘れ  ちゃってたけど、昨日はオレが夕食当番の日だったな。一週間に一度は  オレが母さんやツクモの夕飯を作る日。まだ作る時には母さんの監督付き  だけど、何時かは一人で母さん達に美味い料理を作りたいもんだぜ……。何て、  ソファーに座りながら考えては、ソファー前のテーブルからリモコンを     
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