ある騎士は、見た

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我がタブフェレイト王国に、三百年に一度の厄災が訪れようとしている。 この国で唯一の星読みであるドムコフ大老が、そう予言された。三百年に一度の厄災、それは海の向こうにある島から魔王が人間の世界を襲うという。いわば魔王対人間の大戦のことだ。 三百年に一度、というならば歴史書を紐解けばおよその時期や対策が分かるのではないか、と思わないでもないが、今から百年ほど前に当時の国王陛下が焚書、禁書の令を出してしまったため、我が国にはほとんど書物がない。最近できた王立図書館に並んでいるのは、この令が解かれたここ十年ほどの新しいものばかりだ。 ともあれ、王族と星読みの一族にのみ口承されてきたというしきたりにならい、召喚術なるものを用いて異世界から勇者を呼び寄せることになった。そんな話は初めて聞いたが、魔王を倒せるのは日出国というところから召喚された勇者のみで、その方は人とは思えぬ力や技を繰り出すことで魔王と対等に戦うことができるのだという。魔物や魔獣であれば、この国の北西にある山々に生息する奴らが人里まで下りて悪さをすることがあるため、我々騎士団が討伐に出ることがある。その王となれば相当強いのであろう。
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