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穴山くんの受難
「ふごっ!」
息を吐いた途端、大きな泡がぼくのほっぺをなで上げていく。
「ひっ!」
息を吸ったら、今度は鼻から脳天に向かって五寸釘をブッ刺したみたいな痛みが貫きました。
や、やばい!これは大変危険です。
無意識のうちに手足をバタバタさせましたが、左右に大きく開いた両腕はひじから先がガクガクと動くだけ。足も空を切って…ぼくは今、どうやらうつ伏せの状態で水中にいるようです。やだこれ、死んじゃう。息が、苦しい。
がばっ!隣にいた誰かが僕の身体を引き上げてくれましたが、バランスを崩して尻もちをつく。思いのほか水深が浅くて助かりました。でも今、僕は超絶的にバランスが悪いのです。頭が異様に重たくて、しかも歩幅が狭いから、よちよち歩きしかできません。
ヒーッ。ゲッフッ、ゲッフォォオ。
さっき飲んだ水が口から吐き出されて、うわ、顔中、気持ち悪いです…。
しかし、立ち上がらなくては!こんな無様な姿を人目にさらすことはできません。だって、今のぼくは穴山満ではないのです。わが町が誇る香月山古墳が擬人化したゆるキャラ、こっふんなのですから。
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