起承転

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 金曜日、帰宅すると妻の顔が腫れていた。 「どーした?」 「やっぱわかる?いやちょっと」 「ちょっと、じゃ無くて。喋りにくそうだし」  渋る妻にようやく顛末聞き出した。  捨てるペットボトル踏み潰してたが、ただ踏んでもつまらないので大きくジャンプしてフットスタンプしてた。丸いボトルに跳び降りた時、位置と角度が悪かったか、ボトルは後ろに弾け飛び自分は顔面からキッチンカウンターへ。鼻の下辺り強く打ちつけたと話す口元良く見たら、前歯が一本欠けてる。 「医者は?」 「今日明日忙しくて明後日は日曜だから月曜に行く」 「大丈夫なのか?食べられるの?」 「見た目程ダメージ無いし、外行く時はマスクするから大丈夫」  妻の香(かおり)は先月50歳になったが、抜きん出た粗忽さは若い頃から変わら無い。更年期の不調をようやく脱し、機嫌の良いことも増えて来たとこだ。あまりしつこく言ってまたキレられても面倒だ。 「じゃあ、月曜日ちゃんと診てもらいなよ」      ……………………………………………  月曜、帰宅すると、香の顔の腫れは引いていた。 「良かったな。だいぶ治ってきたじゃないか。昨日迄けっこう腫れ有ったのに。名医だな」 「それが、今日も色々で病院行けなかったの。でも、もう大丈夫みたい」 「いや、大丈夫、じゃなくて。腫れ引いたら歯も入れないと」「大丈夫だってば!ナント新しい歯が生えて来ましたー!」 「何バカなこと。小学生じゃあるまいし…」言いかけた私に「イーッ」と突き出した香の口。歯が根本から抜け落ちて穴になってた箇所に半分くらい歯が生えて来てる。  「バカな…」 「更年期過ぎてから体調やたら良いんだよね。更年期やって良かったわー」 いや、そういう問題じゃないだろ、と頭整理しようとする私に「えー、どういう問題よー」と香。 アレ?今、口に出して喋ったけ、と混乱してると「あ。今の声にしてないやつかー。普通の話とカンジ違うと思ったわ」  え?え?混乱増す私の頭に『最近みんなが声にして無い考えも頭に聴こえるの。やっと少しコントロールできるようになって来たとこ』香の『声』が直接響いた。
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