心理学の講義

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「そうなんです。そこがネックなんですよ。弱ったな…‥。完成したら、役に立つと分かっているソフトなので、開発する心理学専攻の生徒たちと工学部の生徒たちに協力したいと思うんですが、先ほどおっしゃったように関係を悪化させる可能性もあるので、他の生徒に無理にお願いはできないんです。ambivalentな心境ですよ」  は~いと教室後方から女子生徒の挙手する時の声が聞こえた。まさかと思って朱莉が振り向くと、優菜とばちりと目が合い、朱莉は嫌な予感に包まれた。 「あの、経済・経営トライアルゼミの生徒たちになら、教授が頼んでも問題はないと思います。ゼミ生たちは、自分たちの知識や能力を使って、学生企業家たちに貢献をしながら、企業のノウハウを学ぶことを義務付けられているので……」 「ああ、そうか、その手があったね。君は誰か該当する人を知っているのかな?」  朱莉は思わず机に顔を伏せた。向井教授の口から、出てほしくないと思った質問が出てしまい、優菜の張り切った声が聞こえてくる。 「はい、この講義を受講している星野朱莉さんと、3年生の甲斐隆矢さんです。この二人なら教授にご満足いただけるデーターが取れると思います」  みんなの視線が刺さるのを感じて、朱莉が仕方がなく顔を上げると、向井教授の期待に満ちた視線とぶつかった。そのあとのことはよく覚えていない。
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