実験

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実験

「で?どうして、俺がここに呼ばれたんだ?」  1階の会議室の椅子に、不機嫌そうにふんぞり返って腕を組んだ甲斐が、二つ並んだ机を挟むようにして、所在なげに腰かけている朱莉に聞いた。  机に目を落とし、膝の上に置いた手の指を握ったり摩ったりしていた朱莉は、低く響く声に、ピクッと肩を揺らしてしまう。  こ・怖い。誰も甲斐先輩に実験の理由を言わなかったのだろうか?知ったらどうなるのだろうと恐ろしくなり、朱莉は甲斐と視線を合わせず、自分の後方に立つ向井教授をはじめ、心理学専攻の女子生徒3名と、工学部の男子生徒3名を振り返った。  生徒たちは、お互いに顔を見合わせ、眉を八の字にして弱り果てた表情で首を振っている。誰も説明できず、視線はおのずと向井教授に集まった。甲斐の強い視線を浴びた教授は、顔をこわばらせながら、ゼミの中村教授から何と言われたかを恐る恐る聞いた。 「ただソフトの開発に協力してやってくれと言われただけで、内容を質問しても行けば分かるの一点張りでした」
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