地下神殿のご神体

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地下神殿のご神体

 小さいながらも豊かなこの村には、地下へ延びる階段があちこちにあった。  観光客が訪れるほど美麗な装飾の施された階段は、下りると地下通路や人々の憩いの広場につながっている。この辺りの地域は夏場非常に高温になり、日中は少し動いただけで気が遠くなる程だった。だから村の人間は、日のあるうちは地下でひっそりと休むのだ。  皆が涼む地下一層目から更に下へ下りると、そこから先は神聖な場所になる。この村で信仰されている神への祈りの場があり、それより下は地下神殿と呼ばれ神職に就いた者しか入ることを許されていない。この地の宗教では、地下深く潜れば潜るほど神聖な場所になると考えられている。  うんざりする程暑い地上から逃げるように階段を下りると、ひんやりとした心地よい空気が体を癒してくれた。  一層目には既に沢山の村人がいる。皆避難してきたのだろう。私に気付き声をかけてくるので、一人一人に挨拶を返しながら自室へ向かった。未婚の神職者は地下神殿内で生活するため、私の部屋も地下にあった。  「カーデル祭司様」  子供の声で呼び止められた。振り返ると、社使いの服を着た子供が立っている。今年、神職者になる為に神殿に入った子だ。孤児は大体神殿に入る。  「祭主様がお呼びです。最深の地へお向かい下さい」  最深の地は、我々信者の中で最も神聖とされる場所だ。その名の通り神殿で一番深い場所にあり、一層目から向かうにはそれなりに時間がかかる。  「祭主様も最深の地へいらっしゃるのですか?」  「そう聞いております」  祭主様は高齢で足を悪くされており、自室のある層から滅多に移動する事は無かった。更に最深の地へは、細く長い階段を下りなければならない。あの足ではさぞかしお辛いだろう。  そこまでしてもあの地へ行く理由とは。嫌な予感がする。
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