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私とジブリオール祭司は互いの顔を見て、再びアラン祭司を見た。
「あの石は、北の山の洞窟にあるものと同じだろう。似た形の石を持ってくれば…」
「ま…待って下さいアラン祭司」
「そうですわ!別の石に置き換えるなど罰当たりです。」
動揺する私達に、アラン祭司が畳みかける。
「そうでもしなければ、この最深の地のお社が空っぽのままだぞ。ジブリオール祭司が言った異教徒の嫌がらせ説が正しかったら、もう本物のご神体が戻ってくる可能性は殆ど無いんだ」
ジブリオール祭司が「あっ」と声を漏らした。敬虔な信者である彼女は、今までご神体が傷つけられるという発想が出てこなかったようだ。
「経典によればご神体は神そのものではなく、人と神の間を繋ぐツールだ。誠実な気持ちがあれば、新しいものに取り換えても良いのではないだろうか」
アラン祭司の説得に、ジブリオール祭司の心が揺れる。ここぞという時のアラン祭司のハッタリ力には感服する。
「しかしですわ。新しいご神体を用意した所で、どうやってここまで運ぶんですの。仮に神殿の深くまで運べたとしても、この最深の地へは細く長いあの階段のみ。我々三人では、とてもじゃなですが運べるとは思えません」
ご神体は簡単に運べるような大きさではない。石なので、もちろん重い。三人、しかも一人は若い女性だ。こっそり運んで置き換えるなどできそうもない。
「だが事実ご神体を誰にも気付かれずに運んだ奴が居るんだ。何か方法があるはずだ」
アラン祭司が何か痕跡はないかと、草の生い茂る場所を探し始めた。中に潜んでいた兎がぴょんと飛び出したくらいで、一向に何も見つからない。
その横でジブリオール祭司は、険しい顔で考え込んでいた。突然、彼女は何かに気付いたかのように、表情を一変させた。
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