#6ドラゴン脱出

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#6ドラゴン脱出

いててて………ここはどこだ? 辺り一面真っ暗闇だ 。洞窟かな? 沢山の枝が無作為に落ちている。 枝というと冒険に旅出した始めての戦い、キマイラと対峙した時を思い出すなぁ…。 ってことは恐らくここはドラゴンのすみかって感じだな。 僕達はドラゴンに連れてかれたってわけだ。 今はドラゴンいなさそう……ってことは 村からどれだけ離れているんだか。カンテラがいれば…。 でもここにカンテラはいない。僕がしっかりしなくちゃ。 ありゃ?そう言えばタメタはどこに? もしかしたら近くにドラゴンがいるかもしれない。 だから僕はなるべく小さな声で囁いた。 「タメター?いるかー?」 そう遠くない距離から涙声で僕に返答してきた。 「ぐすっ……もう駄目だ……うぇぇぇん!!!………ランちゃん……?」 タメタは涙目で僕の方へと駆け寄った。 「わたし……魔法使いとして精一杯みんなの役に立ちたかった…でも…わたしには何も……」 なんでだろう。タメタを見ていると、ちょっと前までの自分を懐かしく思う。 立派な勇者になりたい。そう思って、そう信じ続けて勇者になった。 だけどカンテラと出会って、自分は勇者としてまだまだ軟弱者だって気付かれた。 自分は何の役にも立てなくて、どうしてここにいるんだろうって。 でも、今なら分かる。僕にはカンテラが必要だ。 そして、カンテラは僕が必要だ。 その間を繋げるのがタメタだと。 「………辛かったんだね、タメタも」 「……うん。…………もしかしてランちゃんも?」 「まぁね、努力しても何も出来ない…無力感に襲われたら、誰だって嫌になるよ。でもさ、それを乗り越えてこそ、今のカンテラがいるように、誰だって、初めから無敵じゃないよ」 「ランちゃん………」 「タメタ、ドラゴンが戻ってくるまできっとあんまり時間はない、やれるだけ最後まで戦おう」 「でも、カンくん抜きじゃ、わたし達だけでは……」 「大丈夫。正面からで勝てる相手じゃないなら、知恵を使えばいいんだよ」
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