#6ドラゴン脱出

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『クソォ……今日はあの小僧のお陰で獲物が捕れなかったな……まぁいい、我がデザートとして前もって二匹の人間を捕まえたのだから。今頃美味しそうに足をすくませているに違いない……フッハァッハァッハァッ!!』 住処に戻りながらこう独り言を呟いたモンスターの正体は巨大な身体をゆっくりと勢いよく動かしたドラゴンのイハカだった。イハカはランタ達がさっきまでいた村やこの辺りの森林一帯から恐れられているドラゴンだった。即ち、この不機嫌そうで不敵に笑うドラゴンはこの一帯の真の支配者というわけなのだ。 イハカは村から遠く離れた洞窟にある住処の中に顔を出して咆哮をあげた。 そこにはやはり少年勇者とひ弱な娘二人がいた。そりゃ逃げるわけないか、弱そうな奴だったからな。空を自由に飛ぶことも出来ず、我にぶつかるとは……いい間抜け共よ。 『お主達、待たせたな…さぁ、晩餐会と行こうか…クカカカ……』 少年と娘は震えていた。だがおかしい。少年の眼はまるで震えてない。 我に勝てる訳もないのに、どういうことだ? Mなのか?それともコミュ障なのか? ……まぁ、どっちでもいいか。 我に喰われるのだからな。 『まずは少年、貴様の指一本残さず喰らい尽くしてやる。だが我は悪魔ではない、最後くらい何か言い残すことはあるか?』 少年は小さな声で囁いた。 「…………僕らをゴクゴク飲み尽くしなよ、全部ね」 やはりだ。この少年は我を恐れてないのか?それともやはりただのMなのか? ドラゴンらしい構文を言えば大概の生き物は我に怖気ついて黙り込むんだぞ。 まぁなんだっていい。 『ふんっ…………我は腹が減ってイライラしてるからな、そうさせてもらおうじゃないか………グガァブフォ!!』 ドラゴンは油断もせずにガバァッと口を開いた。少年に口を近付ける。 しかし少年の目はニヤリとしていた。後ろの娘が何か薬のようなものを手に持っているに気付いた頃には既に遅かった。
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