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そう言うと、男はみるみるうちにライオンの頭に山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持ったでっかいモンスター・キマイラへと変貌していた。
ってぇ…キ、キマイラァ!?
まさか…こんな上級モンスターがっ…ヒィッ…いや、恐れちゃいけない。僕は立派な勇者になるんだ。こんな奴に…負けて溜まるか!ええええええい!
剣を構えて、不気味に笑うキマイラに思いっきり斬りつけた。
しかし、大きな音が響いただけで、傷一つ付かない。
「ふんっ!勇者よ、甘いわ!!」
ブワァッっと雄叫びを上げるような勢いで僕を蹴り飛ばした。
ぐぅ……強いけど…諦めてたるか!こんなところで負ける訳には行かない!!
手から離れた剣を再び掴み、キマイラ向かって走る。
キマイラが尻尾を振り下ろす。だがそんな攻撃食らうものか!
「うぉりゃああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
さっとジャンプして避け、その反動を生かして飛びながらキマイラに斬りかかった。
「グハァッ……」
よし!
「…………とでも思ったか?」
なにぃっ……!?
「グオオオオオ!」
キマイラの咆哮と共に吹き飛ばされる。更に僕の手から離れた剣を踏み潰し、粉々にした。
あぁ…ヤバい……このままじゃ…。
「終わりの時だ、勇者。ギャォォォォ!!!」
もう駄目だ。僕はここでキマイラに食われて、死ぬ。幾ら勇者に憧れて強くなったって、立派な勇者になんか…なれっこないよ…………。
グシャアアアアアっと大きな血しぶきが飛び散った。ああ、僕の胴体が食われたんだね。身体を見る。ボロボロで、地汗が濁って、鎧も粉々に………なっていなかった。
驚きを隠せずに顔を上げる。そこには無表情でキマイラを剣で刺している勇者がいた。
カンテラ……。でも、無茶だ…傷一つ与えただけで、キマイラに勝てる訳がない。
「キマイラ相手に君一人は無理だ!逃げろ!!」
「……………」
「黙ってないで逃げろって!!」
「……うるさい」
カンテラが無表情でそう言うと最低限度の声を荒げてキマイラに刺した剣を抜き、黙々と戦い始めた。なんというか、静かというか…むっちゃ気まずい。
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