#1デコボコ勇者

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バスッバスッと斬りかかりながら俊敏良く小回りが利く。キマイラに反撃の隙を与えずに適切に急所を狙う。つ、強い…全然やれば出来るじゃないか……。 しかし、キマイラだって黙っちゃいない。カンテラの動きの一瞬のチャンスを逃さずに、カンテラが手に持つ剣を噛み砕いだ。 マズイ…このままじゃ…… しかし、カンテラは付近にある木の枝を素早く拾い、それを剣と見立てて斬りにかかり直した。 イヤイヤイヤ流石にさぁ!無茶過ぎだって! その時、カンテラが始めてメンドくさそうな顔をして、 「うるさい!」 と強い一言。途端にカンテラは目に見えない凄い勢いでキマイラを切り裂いた。 え……滅茶苦茶強い。 目をこすって見たけど嘘じゃない。カンテラは、木の枝でキマイラを倒したんだ。 強いよ…強過ぎる……。 「…………んっ」 カンテラが無情に、でもどこか恥ずかしそうに手を差し伸べる。僕は少し恐れ入ったが、その手を掴んで立ち上がった。 「ありがとう、カンテラ。めっちゃ強いじゃん」 「……………」 はぁっ…もう…さっきみたいに、うるさい!って感じになんか言ってくれないかなぁ…これすっごいコミュニケーション取りづらいよ…。 こうして僕達は最初のモドングリを手に入れた。晴れの器を手に入れるまであと四つのモドングリが必要だ。冒険はまだまだ始まったばかりだし、いきなりキマイラが現れたもんだから、この先どんな恐ろしい相手が現れるは分からないし、相変わらずカンテラは無表情で無口だ。 だけど、なんとか出来そうな気がする。 だってさ、僕はカンテラがイライラするような表情を見れたんだ。ならきっとその内カンテラの笑顔も見れるさ。今はまだ、デコボコな僕らだけど、勇者として、きっとやってけるさ。 「ところで、なんであの時勝手にいなくなってたの?」 「……………トイレ行ってた」 「…………そのくらいは待つからちゃんと言ってよ…」 「……………」
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