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バスッバスッと斬りかかりながら俊敏良く小回りが利く。キマイラに反撃の隙を与えずに適切に急所を狙う。つ、強い…全然やれば出来るじゃないか……。
しかし、キマイラだって黙っちゃいない。カンテラの動きの一瞬のチャンスを逃さずに、カンテラが手に持つ剣を噛み砕いだ。
マズイ…このままじゃ……
しかし、カンテラは付近にある木の枝を素早く拾い、それを剣と見立てて斬りにかかり直した。
イヤイヤイヤ流石にさぁ!無茶過ぎだって!
その時、カンテラが始めてメンドくさそうな顔をして、
「うるさい!」
と強い一言。途端にカンテラは目に見えない凄い勢いでキマイラを切り裂いた。
え……滅茶苦茶強い。
目をこすって見たけど嘘じゃない。カンテラは、木の枝でキマイラを倒したんだ。
強いよ…強過ぎる……。
「…………んっ」
カンテラが無情に、でもどこか恥ずかしそうに手を差し伸べる。僕は少し恐れ入ったが、その手を掴んで立ち上がった。
「ありがとう、カンテラ。めっちゃ強いじゃん」
「……………」
はぁっ…もう…さっきみたいに、うるさい!って感じになんか言ってくれないかなぁ…これすっごいコミュニケーション取りづらいよ…。
こうして僕達は最初のモドングリを手に入れた。晴れの器を手に入れるまであと四つのモドングリが必要だ。冒険はまだまだ始まったばかりだし、いきなりキマイラが現れたもんだから、この先どんな恐ろしい相手が現れるは分からないし、相変わらずカンテラは無表情で無口だ。
だけど、なんとか出来そうな気がする。
だってさ、僕はカンテラがイライラするような表情を見れたんだ。ならきっとその内カンテラの笑顔も見れるさ。今はまだ、デコボコな僕らだけど、勇者として、きっとやってけるさ。
「ところで、なんであの時勝手にいなくなってたの?」
「……………トイレ行ってた」
「…………そのくらいは待つからちゃんと言ってよ…」
「……………」
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