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ここは【荒野の雑林】。前回の僕が荒野でキマイラに襲われた場所、まさにここだ。
とても静かだ。ただの環境音のみが聞こえる。心の安らぎになるような。
だけどカンテラは違う。
カンテラの静けさは何か重い。
カンテラが喋らず、無表情なのは単なるそういう人間とかではなく、何故か僕を不安にさせる。
カンテラはなんでいつもこんなに喋らないんだろう。
それなのに無茶苦茶強い。
こんなんじゃ、僕は役立たずじゃないか…。
そう思っていると何故だか勝手に腹が立ってきた。
これは決してカンテラにイラついているのでは無かった。
こんなことを思った自分にイラついていたんだ。
「……カンテラ」
「………なに」
「なんでさ……、そんなに強いんだよ」
「……………」
「なんで…なんで…そんなに無口で無表情でぶっきらぼうの癖に…勇者として成り立ってない君みたいな奴が……僕より強いんだよ!」
「……………」
「僕はずっとずっと…勇者に憧れていた…だから長い間修行や特訓をし続けて、王様に冒険を命じられ日を望んでいた。
あの日、王様からの使命を受けて、勇者として旅立つことが出来て本当に嬉しかった。なのに…君みたいなやる気が無いような努力しなくても強い君が…なんで!なんで!なんなんだよ…!!」
「…………」
はっとカンテラが無口なのを良いことに自分が好き放題八つ当たりしていたことに気付く。
罪悪感ばかりが無残に残る。
「…………ごめん、悪かった。気にしないで、さっさと行こっか」
「……やる?」
え?
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