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家に帰って、ソファーに腰を下ろしポケットからスマホを取り出した。 サークルメンバーがいつも通り、くだらない話で盛り上がっている。送られてきたメールをしっかり読まず、指を動かし下に操作する。 その時、あるメールが僕の目に飛び込んできた。 『もうすぐ、バレンタインデーだね』 その言葉を見たとたん、なぜか顔が熱くなり、緊張してきた。 今年はくれるかな。 自分からあげたことはあったが、もらったことはない。 あげたと言っても、高校生の頃だ。 あれは、高校2年生の夏... 「顔色悪いぞ?」僕は真美の顔を見つめながら言った。 真美は高校の頃バスケ部で、その日は確か大会の次の日だった気がする。 「あ、うん...大丈夫」だけど、真美の顔は『疲れている』ということを、物語っていた。 そんな真美のことを見て、何かできないかと必死で考えた。そして、あることを実行することにした。 次の日学校につくと、急いで体育館に行き、真美の朝練が終わるまで待った。 朝練が終わって出てきた真美は、昨日より疲れているようだった。 「真美!」僕の声に、ビックリして振り返った彼女の顔を見たとたん、心臓がドキドキしはじめた。 「どうしたの?」声は僕に、視線は僕の持っている箱にあった。 「はいこれ」それだけ言って、思わず顔を背けた。 真美は不思議そうな顔をしながら、ゆっくりと箱を開けた。 「キャッ!」彼女は小さく叫び、箱を放り投げた。箱から、おもちゃのゴキブリが飛び出す。 「もう.....ビックリした...」そんな彼女を見て思わず吹き出した。 そんな僕を見て、真美も笑いだす。 「ビックリした!私が虫嫌いなの知ってるくせに...」不満そうに言ってるけど、顔は完全に笑っていた。 「いたずら成功です!」ふざけて拍手をする。 「てか、今日バレンタインじゃん」真美が気がついたように言う。 「これ」僕は、拍手するのをやめて、右手に握っていたものを、真美に差し出した。 「何?またいたずら?」 「違うよ、これ」僕は、無理やり真美に握っていたものを押し付けた。 それは、レモン味の飴だ。 「飴?よく知ってるね、私が酸っぱいの好きなの」彼女は、ちょっとビックリという表情をしていた。 「部活も忙しいだろうけど、少しは休めよ」そう言うと、真美は嬉しそうに微笑みながら、 「ありがとう」と言った。 あの時チャイムがなり、時間に遅れ、先生に怒られたのを覚えている。
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