バレンタイン

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バレンタイン

朝起きていくと、お母さんはもういなかった。 一人で椅子に座り、朝食を食べ始める。もう真美がいなくなって、10日もたつんだ...。 テレビをつけ、用意されたコーヒーを一口飲んだ。そういえば、真美はコーヒーが好きだったな。いつもは子供っぽいのに、コーヒーを飲んでる真美は大人にみえた。 『一緒にお医者さんになろうね!』 ふと、あの時の言葉がよみがえる。そう、僕たちの将来の夢。 勉強して、頑張って入った大学。 一緒に未来を歩める喜び。すべて、2月4日に砕け散った。もう、夢を追いかける気力なんてなかった。あんなに頑張って入った大学もやめたい。 ピーンポーン。玄関の呼び鈴が静かな部屋に響きわたった。 重い体を起こし、玄関に向かう。ドアを開けると、そこにはサークルメンバーの彩希(サキ)が立っていた。 そういえば、彩希は真美と一番仲がよかったな。 「どうした?」僕は、上の空で聞いた。 「これ」彩希は小さな箱を渡した。上品な茶色い箱に赤いリボンが巻かれている。 「これ何?」僕がそう聞くと、彩希は真顔で、 「学校来なよ」とだけ言い、行ってしまった。 家に入り、ゆっくりとリボンをはずしてみる。ほどけたリボンを握りしめ思う。 今日はバレンタイン。 もしかして、サークルメンバーから? そんな思いを抱きながら、そっと箱を開けた。 中には、チョコレートのようなものと二つにたたまれた紙が入っていた。文字が透けて見える。手紙のようだ。 チョコレートのようなものはラッピングされていて、何が入ってるか正直わからない。 ラッピングをとり、中身を見た。 「あ......」 チョコかと思ったら、レモン味の飴だった。 急いでリビングに戻り、手紙を開けた。 丸くて子供っぽくて読みやすい字。それは、どう見ても真美の字だった。ポタポタと涙が目からこぼれた。まるで、この時を待っていたかのように...。 そして、手紙を乾ききった心の中で読みはじめた。
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