悪意の失念

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高田光一は羽賀由紀夫の殺害容疑で警察に確保された。 それは羽賀由紀夫の爪に付着していた高田光一の皮膚組織からの追跡であった。 羽賀由紀夫は、犯人と思われる人物と接触した際に、その犯人の手の甲を爪で引っ掻いていたのだ。それが意図的だったのか、偶発的なものだったのかはもう誰にも分からない。しかし死んだ羽賀由紀夫の爪に残留していた皮膚組織がこの事件を解決に導いたことだけは確かであった。 人は愚鈍で鈍感な生き物である。 他人から発せられる悪意に疎いとは一体誰の言葉であっただろうか。
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