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かみさまとごえん!
「……なにこれ?」
私はそれを見て、思わず足を止めた。
汚れも傷も全くない、真っ赤な鳥居。その奥に見える、同じく汚れも傷も全くない社。
――いやいやいや、おかしい、どう考えてもおかしい。今朝通ったときはこんなものなかったはずだ。あったら絶対覚えている。学校に行っている短い時間で神社が建つものか。
「あー、気のせい気のせい。定期テスト前だし疲れて幻でも見てるんだきっと」
別に疲れるほど勉強している訳でもないけれど、そういうことにしておきたい。そしてさっさと帰りたい。
なにせあまりに新しい神社だ。「由緒:突然現れた」「伝統:1日」で、ご利益もなにもなさそうな雰囲気しか感じない。非常に胡散臭い。
けれど、私の目はいまだ神社に釘付けになっている。どうしてだろう、わからない。何かに呼ばれているような、気のせいなような。
――ひょこっと、賽銭箱の向こう側から何かが頭を出した。目が、合った。
「あっ、どーも」
そう言ったのは、小さな女の子だった。小学校低学年くらいだと思う。肩の長さで切り揃えられた髪は、なんだか座敷わらしのようだ。それでいて服はTシャツに短パン、しかもそのTシャツには達筆で「神」と書かれていて、ちぐはぐした印象を受ける。
女の子は社から鳥居まで駆け寄ってきて、無邪気に笑って言った。
「ようこそ我が神社へ。ぜひとも詣でていってください。そしてお賽銭ください!」
「……はい?」
何を言われたか、よくわからなかった。言われた日本語の意味はわかる。ただ、どうしてお賽銭を要求されたのか?
私はしゃがんで、女の子に目の高さを合わせて話しかけた。
「えっと、神主さんの娘さんかな?」
女の子は私の言葉にきょとんとし、それから考え込む。少しの後、胸を張って高らかに宣言した。
「いいえ、私はこの神社で祀られている神です!」
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