かみさまとごえん!

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 ……これは困った。手に負えないやつだ。  私だって小さい頃に日曜朝のヒーローになりきって遊んだ記憶はある。だけどこの子は神になりきって、しかもそれを見知らぬ他人に向かって名乗るときた。どうしよう。 「心の内の独り言に返事をするのは少々失礼かもしれませんが、訂正させてください。神になりきっているのではなく、本物の神なのです! ……待ってくださいぃいいい帰らないでぇえええ」  何も見なかったことにして帰ろうとしたら、泣かれてしまった。無視して足を進めていても、泣き止まない。一向に泣き止まない。とうとう私は神社まで戻って、女の子にポケットティッシュを渡してしまった。 「やざじいびどでずね」  ずびーっと鼻をかみ、鼻を赤くした顔でまた笑った。  悪い子、ではないと思う。変だけど。 「よければ少しお話ししませんか?」  こっちこっちと手招きして、女の子は社の階段に腰掛ける。ここまで関わってしまったし、と思って私も隣に腰掛けた。 「まずは自己紹介からですね。はじめまして、神です。気軽に神と呼んでください。心が広いので敬称はいりません」  ぺこりと頭を下げる神(を名乗る女の子)。言っていることがめちゃくちゃな割には、ずいぶんと腰の低い神だ。 「私は佐倉ゆかり。神ちゃん?は、何の神様なの?」 「よくぞ聞いてくださいました! 実は、縁結びの神の末席をいただいています、ガチャの神なのです!」 「……何の神だって?」 「ガチャの神です!」 「スマホゲームの?」 「はい!」  テンション高く答える神ちゃんの様子を見るに、聞き間違いではなかったらしい。 「ガチャの神なんてジャンル、あるんだ……」 「最近、人々の信仰心が非常に大きくなっていてですね、新たな神を生むまでになったのです。人々は望む結果が出ることを祈り、ガチャを回します。祈りがあるところに、神がいるのです!」 「ちなみに神ちゃん自身はガチャ好きなの?」 「好きですよ! ちょうどさっきも引くところでした」  スマホで見せてくれたのは、私もやっている大人気のゲームだった。 「今回のピックアップキャラが欲しくて、どうにか10連が引けるまで石を貯めたのです」 「おおー」 「というわけで、引きます!」  ボタンをタッチして、結果を見守る神ちゃん。私も横から覗いて見守った。  ――はたして、結果は。
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