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「言えぬ。言えばお前らは、この男の本性と闘うだろう。それは、望まぬ結末を呼ぶ。我らがと言う意味ではないぞ、誰もが望まぬという意味だ」
暁斎が腕組みをして天を仰ぐ。
「何が潜んでいるのか想像できねえな。だが、やろうとしている事を推し量るこたあ出来る。つまり、この東京で天子様の周囲に何らかの災害を呼び起こす気だろう。怨霊の本性は、天変地異による復讐だからな」
鴉は何も答えない。
「冥界とのつながりを断ち切ってでもこの世に残した依り童か、もうそりゃあ妖怪とかの域を出た怪物としか想像できねえ……」
暁斎のぎょろっとした目が新吾を見た後、彼はものすごい速度で何かを考え始めた。
新吾だけでなく、藤田も荒崎も息を呑み無言の暁斎を見つめる。
やがて暁斎は呟いた。
「半分判れば十分か。まあ、いい、多分これでうまくいく」
暁斎は、おもむろに藤田の袖を引き、彼の耳に何かを囁いた。
藤田が大きく頷く。
次いで、今度は荒崎にはっきりとした声で言った。
「江戸城、じゃねえや、御所の中に神社の祠が幾つかあるだろ、その全部に後で渡す札を治めてくれや」
「何故それを知っておるのです」
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