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十数年前、この一帯は一斉に住宅地として販売された。だから、同じメーカーの似たような一戸建てが続く。その中の一軒が俺の家だ。
鍵を開けドアを押さえてやると、チョコは玄関の中まで入ってきた。
「いいよ、上がって。」
そう言ってやったが、チョコは上がり框を向いて三和土にお座りをした。
「遠慮してんのか?」
返事はない。どうやらかなりキチンと躾けられているらしい。仕方なしに雑巾を持ってきて足を拭き、
「ほら、キレイにしたから入っていいよ。」
そう言ってやると、チョコはようやく拭いてやった足から一歩ずつ上がって来た。そして、玄関を入ってすぐ左手の和室をジッと見つめている。
「和室が気なんのか?入ってもいいよ。.....ああ、それ?それは....俺のお父さんとお母さん。.....去年...じゃないか、もう一昨年か。死んじゃってさ。今、この家に俺一人。」
仏壇に飾られた遺影をジッと見つめるチョコに説明してやった。
「ひどいと思わない?二人一緒に旅先で死んじゃうとかさ、ホント。」
チョコの人間臭い表情に、ついつい友達にでも話しかけるように話す自分がいた。両親は一年半程前に、車で旅行中、渋滞の最後尾で止まった所に居眠り運転のトラックに追突され、あっけなく亡くなってしまった。
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