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ああ、ここまで追いやられたのは誰の差し金であったか。いや、もうそんなことはどうでもいい。このあと何が起こるのか、彼には判らなかったが、それがもう取り返しのつかない事態であることだけは判った。
つい先刻、彼の胸の奥で凄まじい激しさで何かが暴れた。その荒れ狂う何者かは、その両の手で彼の身体を突き破り遥か東海に消えた。
そして、あの揺れが、大地の唸りがやって来た。
あれが、幻影でないとしたら……。
「これもまた、私の仕業であると、そしてあの夜もそうであるなら、多くの者を殺したのは紛れもなく私ではないか! 私は何故ここに居るのだ! そしてこれから何が起きるというのだ!」
男の絶叫にに白装束の男が答えた。
「生かされてきた、あなたは何者かにずっと生かされてきた。だが、それがこんな事態を起こすためであったとは、神の意志は残念だが我々を救えなかった。残念だが、事態はもう起きてしまったのだ。だが、少なくとも……」
この時、最後の言葉は聞き取れなかった。なんとも形容しがたい音が身近に迫って来ていたのだ。
それは紛れもなく破壊の足音だった。
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