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「いい子だ、ダビ。ちゃんと話せるじゃあないか。
試練とは何だ?」
『知らない! 本当だ!
俺は、海に向かわせるまでが仕事だ!』
「そうか」と、吊り下がるロザリオの十字架の下
ボティスは 聖油を塗ったナイフで
ダビの額の生え際から眉間までを 縦に引き
細い傷を付けた。ダビが咆哮し、身体を捩る。
「“天使様” というのは?」
ジェイドが聞くと、ダビは煙の呼気を吐きながら
『俺が... “贖いをすれば、罪は払われる” と
話した後、奥に 潜むと
“天使により救われる” と話したのは
この 神父だ... 』と、十字架を見て答えた。
「女神を買い戻そうとしている、お前のボスは誰だ?」
ボティスが聞くと『男だ... 水 蛇』と
虚ろになった眼を閉じ掛ける。
「最後の質問だ。何人 海へ送った?」
ダビの虚ろになった眼に意識が蘇り
ボティスのゴールドの眼に視線を向けた。
『... 数えては』
胸に空いた左手を置き「ミカエル」と喚ぶと
教会の十字架の下に ミカエルが立つ。
ジェイドがロザリオを引く。
ボティスが、ダビの額を ナイフで横に引き
傷を十字にすると
ヒュウウと 奇妙な音で喉を鳴らした、ダビの眼の強膜が白く変化し、額の十字から黒い煙が吹き出した。
黒い煙は、ミカエルの前で人型になっていく。
枯れ枝のように痩せた、藍色の強膜をした男に。
ミカエルの左手に顕現した秤が傾き切る前に
右手の剣が 煌めきしなる。
ダビの首が 朗読台の前に跳ね落ちると
身体と共に、灰になって解け消えた。
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