少女

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夜中、アド・フェロンは一人、第四セクターにいた。理由は専門店の店主を殺すためだ。彼は店から情報がASPに流れる危険性を考えていた。まず、手早くガジェット専門店の店主を射殺した彼は、次に地下道の武器屋へと向かう。平然な足取りで、落ちつきを払って、家に帰るかのように入店する。 先客の男がいる。主人との会話に夢中で、背後の刺客に気づかずに笑っている。アドは男の後頭部に銃口を押し当てて発砲、壁に血がとび散った。無関係な客であろうと、それは至極どうでもいいことで、彼はまったく意にかえさない。肩に手を置く程度の振る舞いをしただけ。それくらい、客の死に無関心だった。 「ア、アド! いきなりなにを……」  主人は腰を抜かして後ずさる。 見下ろすアドの眼から放たれる殺意に、主人は顎を震わせて命乞いした。  アドは彼の耳元で一言二言、囁いて答えを待った。 「は? え、そんなこと気にしたこともないし、特にどうと言われてもワシにはさっぱり……」主人は困惑したようすを見せた。  それはアドが求めていた答えだ。  彼はにっこりと笑顔で銃を構えた――。
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