賞金稼ぎ

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賞金稼ぎ

都市暦五五年四月一日、荒廃都市(アルモニア)の北西に位置する工場区。巨大な橋がいくつも頭上で交差し、工場のひとつひとつをミニチュアに至らしめていた。錆びついた鉄の世界が地上を覆い、スモッグがゆったりと地面を撫でている。 工場区第三区画は人の往来がほとんどない区画で、鉄の裁断や加工する音だけが、閑散とした一帯を無感情にはやしたてている。心臓の音などどこにもなく、冷たい肌のロボットが永遠に終わらない清掃作業に追われていた。暗雲の放つぼんやりとした光に照らされた、生を感じさせる痕跡のない乾いた空間。それは、都民たちにとって恐怖の対象でしかない。誰も近づかない場所――そこに目をつけるのはいつだってアウトローだと相場が決まっている。 鉄橋の路上に駐車されていたバイクの横で、アド・フェロンはうたた寝をしていた。彼は夢をみていた。 瓦礫のうえに幼い女の子の笑顔が朧げに浮かんでいる。街中でゴミ箱を漁って、手にした生ゴミを頬張る自分。その吐き気を催す味は記憶にこびりついている。薄汚い男の皮膚を剥がしている自分の笑い声。それが使命だと思っている。誰かに銃口を突きつけ、引き金をひくたび、快感に酔いしれる自分。少女の叫び声は、ノイズにかき消された。ふと、鏡に男が写る。自分の顔だ。痩せこけた褐色の顔。のれんのように垂れさがる黒髪から、虚ろな翡翠色の眼を覗かせる。髭のはえた口がゆっくりと開いた。  “俺は……まだ、諦めない。諦めない。必ず、必ず――”
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