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翼は少女の手を振り払い、俯き加減で
「じゃあな…。」
と言うと去って行く。
翼はこれ以上、少女と関わり合いたくなかった。
『ほら、あの子よ。またあの子、睨んで…』
『お前、弱いクセしてガンつけてんじゃねーぞ!!』
翼は過去のことを思い出してしまった。
「(止めろ!止めろ!止めろ!止めろ!)」
心臓がバクバクと脈を打っていく。
『ねぇ、あいつのせいにしようよ!!“目つき悪い”し、“悪者”にさ~』
生まれつきとは言え“コンプレックスの三白眼”でずっと否定され続けていた過去を
「(止めろ…!止めてくれ!!)」
翼は息苦しくなり、しゃがみ込んだ。その時だった。
「「翼!!」」
翼はハッと顔をあげる。
すると翼に駆け寄る男女がいた。
そして翼を取り囲むように2人はしゃがみ込む。
「翼……酷い汗ね…。大丈夫?」
と艶やかな美しい漆黒の長髪にお姫様のような黒いドレスを身に纏った少女。少女は身につけていたバックの中からハンカチを取り出すと翼の額や顔の汗を拭く。すると男性は
「翼!あれほど、“過去を忘れなさい”と言ったでしょう!!君はもう私達の“眷属”なのだ!!誇りを持ちなさいと…」
とブツブツと小言を言う。
「わ、悪い…。ベル様…アスタロトさん…。」
ベル様と言われた少女は
「翼…マンションへ一度戻りましょう?そこで話を聞くわ。」
ああと言うと翼はベル様の手を借りながら、立ち上がった。
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