Spring in Full Bloom ー第1話ー

3/6
778人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
 そう反論しながら、岡崎はふらつく脳で考える。  ーー心に届くような波を、女子から感じたことはない。  ……だが……。  心に波ーー  それは最近……どこかで感じた。  思っていたよりも、それはずっと大きな波で。  俺も……それに手を伸ばそうとして。  その波になら、身を任せてもいい。  確かにーーそう思ったんだ。  あれは……  その時ーー自分を心配そうに見つめる吉野と、視線が絡み合った。  そこに何かを探すように、岡崎は吉野の瞳の奥を覗き込む。  ……あれは…… 「……岡崎?」  ああ……そこにーー  ーー待て……  そこから先は……入っちゃだめだ!  突然、心のどこかで鋭い警報音が鳴る。  ーーそれは、お前の「親友」だーー。 「ーーー」  はっと我に返り、岡崎は慌てて吉野から目を逸らす。  思わず、目の前にあったブランデーのグラスをぐっと一気に飲み干した。 「おい、お前……大丈夫か?」  乱暴に酒を呷り、ますます壊れそうな岡崎の気配に、吉野は微妙に狼狽える。 「とにかく……俺は、彼女には応えられない。 どんなに請われても、拒否しなければならない」  荒い音を立ててグラスを置き、独り言のように苦しげに岡崎は呟く。  吉野は、そんな岡崎を黙って見つめた。  生真面目なこいつはーー彼女の想いを受け止めてやれないことが、どうにも苦しいのだろう。  あるいはーー  絶対諦めたくない運命の人……そこまで思われている相手を拒み続ける自信が、持てないのかもしれない。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!