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ーーリナは気は強いが、文句なしに美しい。それに、どこか男心をくすぐるかわいいところのある女だ。
密かに彼女を狙っている男たちも、実際山ほどいるはずだ。
そんな彼女が、本気でこいつを落としにかかったらーー
根負けして、陥落……なんて可能性も、あるんだろうか……?
そしたら……
こいつは、リナに持ってかれちゃうのか……?
「……岡崎」
「ん?」
「ーー今度は、俺が彼女に話すよ。
お前は、リナには寄り添えないって……だから、きっぱり諦めてくれって」
さっきとは違うその思い詰めたような口調に、岡崎は少し驚いたように吉野を見た。
「ーーだが……」
何か言おうとする岡崎を、吉野が遮る。
「俺、もう決めたから。
彼女は可哀想だけど……事実がそうなんだから、誰が伝えても一緒じゃないか」
「…………」
岡崎は、どこか腑に落ちないような顔をして黙り込む。
……こいつを、これ以上リナに近づけたくない。
絶対に。
自分自身の身勝手さをどこかで感じながらもーー頑として動かない自分の思いを、どうすることもできない。
吉野は、苦い表情で煙草を灰皿に揉み消した。
*
「おい、着いたぞ……ったくお前は!!」
賃貸マンションの6階、吉野の部屋。
なんとかここまで、ドロドロに泥酔した岡崎を運んできた。
完全に正体をなくした幼馴染を、ベッドへどさりと寝かせる。
ーー飲みすぎた気持ちは、よくわかるけどな……。
コンビニで買った炭酸水のペットボトルを呷って荒い息を収めつつ、吉野はぐったり横たわる岡崎を見つめた。
……っつうか、なんでいつもそんなにきちんとスーツ着てるんだよお前?
きっちりとボタンを留めたワイシャツにネクタイを緩めもせず、岡崎は苦しげな息を吐く。
……こういう時、ほっといていいのか?
脳内で、もう一人の自分がぼそりと呟いた。
苦しそうだぞ……介抱してやらないのか?
幼馴染だろ。やってやれよ。
ああ。その方がいいのはよくわかってる。
……だが。
ーーーーだがっ!!
「……けほっ」
その時、岡崎が辛そうに小さく咳き込んだ。
このままじゃ……さぞ苦しいだろう。
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