Spring in Full Bloom ー第1話ー

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「……ああーー!!もおぉーっっ!!!」  吉野は、ぐしゃぐしゃと自分の頭を掻きむしる。  そして……恐る恐るベッドに近寄り、岡崎の上に身を屈めると、震える指でネクタイの結び目を緩め始めた。  自分的には、今のこの状況下で最も避けたい作業だが……こうなれば、もう仕方がない。  ワイシャツのボタンも外し、喉元を開く。  その拍子に、白く温かい首筋が、微かに指に触れた。  柔らかい肌の感触に、思わず顔がカッと熱くなる。 「ううっ……!」  無意識に吉野は妙な唸りを上げる。  ……マジで勘弁してくれ。殺す気か!?  意味不明な叫びを脳内で上げても、ただ虚しく響くばかりだ。  変な汗をかきつつ、動くたびに突っ張る両手首のボタンも外し、窮屈に締めたベルトのバックルを緩めにかかった。  そのカチャカチャという金属音に、なぜか半端でない罪悪感が纏わりつく。  酔っ払いの介抱としてごく当然の行動のはずが……してはいけないことをしている気がしてならない。  ーー仕方ないんだからな。  だって、こんな苦しそうで。こいつのために仕方なくやってんだぞ俺は。  そう思いつつも、心臓は胸を突き破る勢いで波打つ。  どんなかわいい女子をここへ連れて来ても、こんなことはなかったのに。  そう焦れば焦るほどーー触れた肌の感触が、指から離れない。  その首も、腰も……思ったよりずっと細く、しなやかで…… 「んん……」  苦しげに身体を動かそうとする岡崎の眼鏡が、鼻からずれそうだ。 「ーー仕方ないんだからな!」  声に出して必死に弁解しつつ、そっと眼鏡を外す。  初めて見る、何もつけていない岡崎の寝顔を、吉野は思わずまじまじと見下ろす。  フレームに邪魔されてよく見えなかった、美しい形の繊細な眉が現れた。  眉の色と髪の色が、こんなにも柔らかそうな栗色だったことに、吉野は初めて気づいた。  ーー華奢に整った鼻筋と、長く伏せられた睫毛。  酔いのせいで、ほんのりと桃色に染まった目元。  苦しげに僅かに開いた、艶やかな唇。  緩めたネクタイとワイシャツの胸元から覗く、形の良い鎖骨ーー  鋭く硬質な普段の彼からは程遠いその無防備な姿は、どこか少年のような瑞々しさを漂わせる。  
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