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「たたたたたたたたた、ただいまーーー! ぁだっ」
玄関の段差で躓いて、思いっきり鼻を打っちゃった。
「ちょっと真! そんなに慌てたら怪我するでしょ!」
「に、兄ちゃんは……っ」
じんじん痛む鼻を押さえながら靴を脱ぐ。ちゃんと靴箱に靴をしまわないとお母さんに怒られるから靴もしまう。
「兄ちゃんっ」
リビングに飛び込むと、そこには。
「真、おかえり。また大きくなったな」
「にっ……兄ちゃん!!」
兄ちゃんだ、誠司兄ちゃんだ……!
兄ちゃんに思いきり抱き着く。そうすると、兄ちゃんはいつも頭を撫でてくれる。それが気持ちよくて、もっとしてほしいからもっとギュッとする。
「ほら、真。鞄を置いておいで」
「うんっ」
兄ちゃんから離れたくないけど、でも兄ちゃんの言うことならきく!
ドタドタ階段を上がったら、リビングからお母さんが「危ないから階段は走らない!」って大声で怒った。兄ちゃんがいるのに……恥ずかしい。
「真はもう十一歳か? 早いな。小学五年生か」
「そう、五年生! 身長もね、伸びた! 八センチ!」
オレはクラスでも大きいほうだ。157センチ。兄ちゃんはそれでも見上げるくらいに大きい。背伸びしても全然届かない。兄ちゃんは何センチあるんだろ?
「会う度に大きくなるな。俺くらいすぐに追い抜いちゃうかもな」
「えっ……」
兄ちゃんより? ウソっ。
何か想像したら、何か、何か変。オレが兄ちゃんを見上げるみたいに、兄ちゃんがオレを見上げるってこと?
な、何かそれって――良いな。
「んー。真はどうかしらね? うちでは誠司は特別大きいけど、私もそんなでもないし、真信さんが平均くらいだったから。真は真信さんによく似てるもの」
ワクワクしてた頭が、お母さんの言葉で一瞬にして冷めた気がした。
真信さん――お父さん。写真でしか知らないお父さん。
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