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本当は知ってる。
皆がオレを通して、お父さんを見ていることくらい。
お父さんの方のおじいちゃんおばあちゃんが、たまにオレの名前をお父さんと間違えるから。
でも、間違えてるわけじゃないのかもしれない。お父さんの名前を呼びたいのかなって、何となく思ったんだ。
酔っ払ってオレに「まさのぶ」って言うおじいちゃんに、オレは「違うよ、真だよ」って言えなかった。「何?」って返事をした。
「またお前、大きくなったなあ」って言って、おじいちゃんはちょっとだけ泣いてた。
お父さんがオレくらいの時の写真を見せてもらったら、オレでも「これ、オレだ!」って言っちゃうくらい似てた。だから仕方ないのかもしれない。
けど、兄ちゃんだけには嫌だ。似てるとか、似てきたとか言われたくない。
兄ちゃんがいるのに、兄ちゃんにもお父さんに似てるって言われたらどうしよう――
急にお父さんに似たオレの顔を見られるのが怖くなって、オレは下を向いた。そのオレの頭に、あったかい掌が乗っかった。
「真は俺とも血が繋がってるんだから、俺に似て背が伸びるかもしれないよ」
掌がオレの頭を撫でてくれる。
下を向いてた顔を上げると、兄ちゃんがすっごく優しい顔で笑ってた。
「そうかな……?」
「うん」
「血が繋がってるんだから、もしかしたら大丈夫かな? 兄ちゃんに似て背が伸びるかな?」
「そうかもな」
ぎゅうって兄ちゃんにまた抱き着く。そうすると絶対兄ちゃんは、撫でてくれる。
「本当に真は誠司兄ちゃんっ子ねえ」
お母さんがちょっと呆れたみたいに言った。
誠司兄ちゃんっ子って、何だか良いなあ。
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