【番外編】 真

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***  ぷかぷかお風呂に入ってたら、何となく思い浮かんだ。 「兄ちゃんはオレと何才違うっけ?」 「俺は今、二十九だよ」 「じゃあ十八才違う?」 「そうだな、……十八も違うのか。俺も老けるわけだな」  泡立ったシャンプーを流して、タオルで髪の毛をわしゃわしゃ拭いて、兄ちゃんもお風呂に入ってきた。お湯がぶわって溢れて二人で笑う。 「でも、そしたらオレが大人になったら、大人って言うのはハタチだから」 「うん」 「その時まだ兄ちゃん三十八才だ!」 「う、うん……?」 「お母さんが今三十八才だもん」 「ああ、そうだな。姉さんもそんな歳か」  オレが大人になって大きくなった時、兄ちゃんはまだ今のお母さんと同い年。  何だ、全然若いよ。お母さん白髪もシワもないし。オレが大人になっても――全然、大丈夫じゃん。  ん?  ……大丈夫って何がだろう?  自分で思ったことなのに、「?」マークがいっぱい浮かんだ。ただ頭の中に兄ちゃんより背が高くなったハタチのオレがいて、兄ちゃんを見下ろしてる。 「兄ちゃん」 「ん?」 「オレがハタチになるまでは、結婚とかしちゃダメだよ! オレが大人になるまで待ってて!」 「……真が二十歳って、俺はもう四十近いんだけどな」 「ちーがーうー! まだ、三十八才じゃんっ」 「まあ……結婚なんて、相手がいないと出来ないからな。真は好きな女の子はいるのか?」  好きな女の子?  考えてみるけど、浮かばない。バレンタインにチョコはもらうし、もらったら返さなきゃってお母さんに言われたから返したけど、別に好きじゃないし。  好きって言うのはつまりさ、キスしたりとかしたい人って事だよね? 手を繋いだり、抱きしめたり、とか。  そういえば、好きってどういう事だろう? 別に学校で習う訳じゃないし、食べ物やスポーツとか勉強の好き嫌いとは違うんだろうし……やっぱり、よくわかんない。 「んー、いないよ。好きってよくわかんないし」 「そうだなぁ。確かに、言葉にして説明しようとすると難しいかもな。 例えば、そうだな――その子と一緒にいたいとか、もっとその子を知りたいとか、触ってみたいとか、一緒にいるとドキドキするとか、……真くらいになると、好きな女の子の話をする友達もいるんじゃないか?」 「いるけどー……」
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