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ぷかぷかお風呂に入ってたら、何となく思い浮かんだ。
「兄ちゃんはオレと何才違うっけ?」
「俺は今、二十九だよ」
「じゃあ十八才違う?」
「そうだな、……十八も違うのか。俺も老けるわけだな」
泡立ったシャンプーを流して、タオルで髪の毛をわしゃわしゃ拭いて、兄ちゃんもお風呂に入ってきた。お湯がぶわって溢れて二人で笑う。
「でも、そしたらオレが大人になったら、大人って言うのはハタチだから」
「うん」
「その時まだ兄ちゃん三十八才だ!」
「う、うん……?」
「お母さんが今三十八才だもん」
「ああ、そうだな。姉さんもそんな歳か」
オレが大人になって大きくなった時、兄ちゃんはまだ今のお母さんと同い年。
何だ、全然若いよ。お母さん白髪もシワもないし。オレが大人になっても――全然、大丈夫じゃん。
ん?
……大丈夫って何がだろう?
自分で思ったことなのに、「?」マークがいっぱい浮かんだ。ただ頭の中に兄ちゃんより背が高くなったハタチのオレがいて、兄ちゃんを見下ろしてる。
「兄ちゃん」
「ん?」
「オレがハタチになるまでは、結婚とかしちゃダメだよ! オレが大人になるまで待ってて!」
「……真が二十歳って、俺はもう四十近いんだけどな」
「ちーがーうー! まだ、三十八才じゃんっ」
「まあ……結婚なんて、相手がいないと出来ないからな。真は好きな女の子はいるのか?」
好きな女の子?
考えてみるけど、浮かばない。バレンタインにチョコはもらうし、もらったら返さなきゃってお母さんに言われたから返したけど、別に好きじゃないし。
好きって言うのはつまりさ、キスしたりとかしたい人って事だよね? 手を繋いだり、抱きしめたり、とか。
そういえば、好きってどういう事だろう? 別に学校で習う訳じゃないし、食べ物やスポーツとか勉強の好き嫌いとは違うんだろうし……やっぱり、よくわかんない。
「んー、いないよ。好きってよくわかんないし」
「そうだなぁ。確かに、言葉にして説明しようとすると難しいかもな。
例えば、そうだな――その子と一緒にいたいとか、もっとその子を知りたいとか、触ってみたいとか、一緒にいるとドキドキするとか、……真くらいになると、好きな女の子の話をする友達もいるんじゃないか?」
「いるけどー……」
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