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水仙の甘い香りが漂う。
家庭科室のおおきなテーブルには、ランチマットの上に今しがた作り終えたマフィンとジャムが並んでいて、真ん中に水仙がおかれている。あの日買った便せんと同じ、白い水仙。ランチマットはコピー用紙に花柄を印刷しただけのものだけれど、あるだけで気分が少し上向きになる。ただ作って食べるだけじゃなくて、そういうところまで気を配ってくれる先生は大人だなって思う。
「綺麗ですね」
片付けのとき花瓶を先生のもとへ持っていった。
「家に咲いてたからちょうどいいと思って切ってきたの。持って帰る?このクラスで最後だし」
「いいんですか」
各テーブルにあった水仙を集めて二つに分けた。私の分と、花の分。おばあちゃんがいただき物の花をよくみんなに分けていたことを思い出しながら手を動かした。ティッシュを濡らして切り口にあて、家庭科室のアルミホイルを少し拝借して包む。ランチマットのペーパーをまいてとめる。そういえば今朝、校門前で塾のビラをもらったのだった。ビラが入っていた透明の封筒の上下を開いて、ペーパーの上から被せた。これでいくらか形になるだろう。
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