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「そのことなっちゃんと話したことあるわ。琴里ちゃん頑張って嶺女入ったのにそんなこと言うたらあかんよ、て言うたんよ。そしたらなっちゃん言わはったの。誰もあかりにはなれない、って。そういうことは早く知っておいたほうがいいって」
思わずカップを置く手をとめて、あかりちゃんを見つめた。
「なっちゃん、私になりたいってずっと言うたはった。でも私がこんなにのんびり過ごしてこれたのはなっちゃんのおかげ。なっちゃんがおらんかったら今の私はおらんのよ。だから私になろうとしいひんくても、なっちゃんはちゃんと私やったのにね」
純真で、潔白なもの。私たちはそれを手に入れたいと思った時点で、手に入れることはできない。その時点で自らの汚点を認めているようなものだから。それにそれは手に入れようと思って手に入れられるものではない。なっちゃんもその一人だったんだ。なっちゃんは私に自分を重ねていた。やっと私もなっちゃんに自分のことを重ねられる。そして知る。私は、私でしかないという当たり前のことを。
「私、こういうときなっちゃんやったらどないするかなって考えることようあるんやわ。そうやって私の中にいるなっちゃんが、自分を動かすことがあるの」
多分、いろんなことを思い出してる。それは二人にしか分からないことだ。
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