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「琴里はあかりにはなれない」
そう言われた次の日は始業式で、ホームルームでは一人ずつ自己紹介をした。みんな自分の育った街とか、通っていた小学校のこととか、習い事のこととか、どんな漫画やアニメが好きかとか言っていた。そういうことで自分というものは簡単に定義づけられる。
「関琴里です。私は、」
私もそういうことを言ったと思う。五条に住んでます。家は喫茶店です。でも本当は言いたかった。
「私にはなにもありません」
あかりちゃんになりたいといってつくりあげた部分はぽっかり穴になってしまって、そしたら自分には何も残されていなくて、あかりちゃんのようになれないと分かってからも、そうなろうとすることでなんとかそこを埋めようとして、私はすっかり本当の自分というものがどこにいるのか分からなくなってしまっていた。
あかりちゃんは大学生になった今でも毎週のようにここへ来てくれる。時々お店も手伝ってくれる。一方、なっちゃんはあんなに大切にしていたあかりちゃんをおいて東京へいってしまった。私はというと、あかりちゃんになれないまま、私にもなれないまま、あの日のなっちゃんと同い年になった。
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