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水仙の花
花はさっそく鳩居堂の包装紙でつくった花と鳥のブックカバーを文庫本にかけてきた。ページをめくる彼女の肩にやわらかな陽射しが落ちている。今はもうこの世にいない吉田さんの奥さんと同じことを、花がしている。二人は互いのことを全く知らないのに。不思議な感じだ。
「花は、なんで私のこと好きになったん」
あかりちゃんに言われてからずっと気になっていたことだった。
「それは」
「それは?」
「一言ではいえないかも…」
花は神妙な顔をして黙ってしまった。ちゃんと答えるからもうちょっと待ってほしいといわれ、その日はなにもきけないまま家路についた。
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